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コラム 脆弱性診断とは?その必要性から費用、サービスの選び方まで解説


脆弱性診断とは?その必要性から費用、サービスの選び方まで解説

近年、企業のDX化が進む一方で、サイバー攻撃の手法はますます巧妙化し、多くの企業がセキュリティ上の脅威にさらされています。

自社の情報資産や顧客の信頼を守るためには、プロアクティブなセキュリティ対策が不可欠です。その中でも基本かつ重要な取り組みが「脆弱性診断」です。

脆弱性への対処は、各国でガイドライン化、規制化が進んでおり、日本、米国ではIPA(情報処理推進機構)、NIST(National Institute of Standards and Technology)がガイドラインを、欧州においてはNIS2 (Network and Information Systems 2)やDORA(Digital Operational Resilience Act)が重要インフラおよび金融セクターに組織的に取り組むことを義務化しており、企業の運営の為に欠かせない対策の一つになっています。

本記事では、脆弱性診断の基本から、その必要性、種類、費用の相場、そして自社に最適なサービスの選び方まで、分かりやすく解説します。

1. 脆弱性診断とは?セキュリティ対策の基本を理解する

脆弱性診断は、コンピューター、ネットワーク機器、ソフトウェアに潜在する弱点や不具合を可視化するための企業のセキュリティ対策における第一歩です。まずは、その基本的な概念と目的について正しく理解しましょう。

脆弱性とはプログラムの弱点や不具合のこと

脆弱性とは、コンピューターのOSやソフトウェア、Webアプリケーションなどにおいて、プログラムの設計ミスやバグが原因で発生する情報セキュリティ上の弱点のことです。この弱点を放置すると、サイバー攻撃の侵入口として悪用される可能性があります。

例えば、不正アクセスを許してしまったり、不正な操作によって個人情報が盗まれたり、Webサイトが改ざんされたりする被害につながります。脆弱性は、システムが稼働している限り、いつでも新たに発見される可能性があるため、継続的な対策が求められます。

脆弱性診断の目的はセキュリティリスクの可視化

脆弱性診断の主な目的は、運用中のシステムや開発したアプリケーションにどのような脆弱性が、どこに存在するのかを網羅的に洗い出し、セキュリティリスクを可視化することです。診断を通じて、攻撃を受ける可能性のある箇所を特定し、その危険度を評価します。

これにより、企業はどの脆弱性から優先的に対応すべきかを判断でき、効果的かつ効率的なセキュリティ対策を計画・実行することが可能になります。

目的 具体的な内容
リスクの可視化 システムに存在する脆弱性を網羅的に特定し、一覧化します
危険度の評価 発見された脆弱性が、ビジネスにどの程度の影響を与えるかを評価します
対策の優先順位付け 評価結果に基づき、対応すべき脆弱性の優先順位を決定します
安全性の証明 取引先、顧客、監督機関に対し、システムの安全性を客観的なレポートで示します

2. なぜ脆弱性診断が必要不可欠なのか?

多くの企業が当たり前のようにWebサービスを提供する現代において、脆弱性診断の重要性はますます高まっています。診断を怠ることが、いかに大きなリスクにつながるかを認識することが重要です。

脆弱性を放置することで発生する深刻なリスク

脆弱性が発見されたにもかかわらず放置していると、悪意のある攻撃者に悪用され、様々な被害を引き起こす可能性があります。

代表的なリスクとしては、顧客情報やクレジットカード情報などの機密情報漏えいが挙げられます。情報漏えいは、顧客への損害賠償や行政からの罰金といった金銭的損失だけでなく、企業の社会的信用の失墜にも直結します。

その他にも、Webサイトの改ざんによるブランドイメージの低下や、ランサムウェア感染による事業停止など、ビジネスの継続そのものを脅かす深刻な事態に発展するケースも少なくありません。

ビジネスの信頼性を守るための重要な取り組み

脆弱性診断を定期的に実施し、発見された問題を迅速に修正することは、自社の情報資産を守るだけでなく、顧客や取引先からの信頼を維持・向上させる上で極めて重要です。

特に、個人情報を扱うサービスや決済機能を持つECサイトなどでは、高度なセキュリティ対策が求められます。

脆弱性診断を実施していることは、セキュリティに対する企業の真摯な姿勢を示すことになり、顧客が安心してサービスを利用できるという信頼感につながります。これは、結果として企業の競争力強化にも貢献します。

3. 脆弱性診断とペネトレーションテストの違いは?

脆弱性診断とよく似た言葉に「ペネトレーションテスト」があります。この二つは目的や手法が異なるため、自社の状況に応じて適切に使い分けることが大切です。

目的の違い:網羅的な調査と具体的な侵入テスト

脆弱性診断の目的は、システムに潜む脆弱性を「網羅的に洗い出す」ことです。

これに対し、ペネトレーションテストの目的は、発見された脆弱性などを利用して「システム内部へ侵入できるか、また、侵入された場合にどのような被害が発生しうるかを実証する」ことにあります。

脆弱性診断は網羅性を重視する健康診断に、ペネトレーションテストは特定の脅威に対する精密検査に例えることができます。

手法の違い:システム全体のスキャンと攻撃者目線のシミュレーション

脆弱性診断では、既知の脆弱性パターンをリスト化した診断項目に基づき、ツールや手動による検査を組み合わせてシステム全体を網羅的に調査します。

一方、ペネトレーションテストでは、セキュリティ専門家が攻撃者と同じ視点や思考で、様々な手法を駆使してシステムへの侵入を試みます。実際の攻撃シナリオを想定し、システムだけでなく、人的な側面も含めた総合的な耐性を評価するのが特徴です。

適切な診断を選ぶための使い分け

どちらの診断が優れているというわけではなく、目的に応じて使い分けることが肝心です。まず、脆弱性診断を定期的に実施してシステム全体のセキュリティレベルを維持し、網羅的に脆弱性を把握します。

その上で、特に重要なシステムや、新たな脅威への耐性を確認したい場合にペネトレーションテストを実施し、より実践的な観点からセキュリティ対策の有効性を検証するのが効果的です。

項目 脆弱性診断 ペネトレーションテスト
目的 脆弱性の網羅的な検出とリスク評価 特定の攻撃シナリオに対する耐性の検証
手法 ツールと手動による網羅的なスキャン 専門家による攻撃者目線での侵入試行
範囲 対象システム全体 事前に定めた特定の範囲やゴール
頻度 定期的(年1回、四半期に1回など) 必要に応じて(システムの重要変更時など)

4. 脆弱性診断の主な種類と対象領域

脆弱性診断は、診断対象となるシステムの特性によっていくつかの種類に分類されます。自社が保護したい対象に合わせて、適切な診断を選択する必要があります。

診断の種類 主な診断対象 発見される脆弱性の例
Webアプリケーション診断 ECサイト、会員サイト、業務システムなど SQLインジェクション、クロスサイトスクリプティング
プラットフォーム診断 Webサーバー、OS、ネットワーク機器 不要なポートの開放、古いソフトウェアの利用
スマホアプリ診断 iOS/Androidアプリ 通信の盗聴、リバースエンジニアリング耐性の欠如
クラウド診断 AWS, Azure, GCPなどの設定 アクセス権限の設定不備、ストレージの公開設定ミス)

Webアプリケーション診断

ECサイトや会員サイト、業務システムなど、ブラウザを通じて利用するWebアプリケーションを対象とした診断です。

SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった、Webアプリケーション特有の脆弱性を検出します。ユーザー認証機能や個人情報を入力するフォームなど、攻撃の標的となりやすい機能を中心に検査します。

プラットフォーム診断(ネットワーク診断)

WebサーバーやOS、データベース、ネットワーク機器といった、アプリケーションが稼働する基盤(プラットフォーム)を対象とする診断です。

不要なポートが開いていないか、OSやミドルウェアに既知の脆弱性を持つ古いバージョンが使われていないか、設定に不備がないかなどを検査し、システム全体のセキュリティ強度を評価します。

スマートフォンアプリケーション診断

iOSやAndroidで動作するネイティブアプリケーションを対象とした診断です。アプリケーション本体の解析(リバースエンジニアリング)への耐性や、アプリ内に重要な情報を平文で保存していないか、サーバーとの通信が暗号化されているかなどを検査し、スマートフォン特有のリスクを評価します。

クラウド診断

AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azure、GCP(Google Cloud Platform)などのクラウドサービスの設定を対象とした診断です。クラウド環境は柔軟性が高い一方で、設定ミスが重大なセキュリティインシデントにつながることがあります。アクセス権限の設定不備や、意図しない情報公開がないかなどを確認し、クラウドの責任共有モデルにおける利用者側の設定責任を果たせているかを評価します。

5. 脆弱性診断の具体的なやり方と比較

脆弱性診断の実施方法には、主に「ツール診断」と「手動診断」の2つのアプローチがあります。

それぞれにメリットとデメリットがあり、両者を組み合わせることで、より精度の高い診断が可能になります。

比較項目 ツール診断 手動診断
診断精度 △(既知の脆弱性が中心) ◎(未知・潜在的な脆弱性も発見可能)
網羅性 ◎(広範囲を機械的にチェック) 〇(専門家の判断で重点的に調査)
コスト 〇(比較的安価) △(高価になる傾向)
スピード ◎(短時間で完了) △(時間がかかる)
適した用途 定期的な全体チェック、開発初期段階での利用 重要なシステムの詳細診断、リリース前の最終確認

ツール診断の特徴とメリット・デメリット

ツール診断は、専用の診断ツールを使用して自動的に脆弱性をスキャンする方法です。

広範囲を短時間で網羅的に診断できるため、定期的なチェックに適しています。比較的安価に実施できる点もメリットですが、ツールが検知できるのは既知の脆弱性パターンに限られ、複雑な仕様や設計上の問題点など、ビジネスロジックに依存する脆弱性の発見は困難です。

また、検出された脆弱性が本当にリスクにつながるものか(過剰検知)の判断には、専門的な知識が必要になる場合があります。

手動診断の特徴とメリット・デメリット

手動診断は、セキュリティ専門家がシステムの仕様やビジネスロジックを理解した上で、手作業で擬似的な攻撃を試みながら脆弱性を検査する方法です。
ツールでは発見が難しい、アクセス制御の不備や複雑な手順を踏むことで発生する脆弱性など、より高度で潜在的なリスクを発見できるのが最大のメリットです。

一方で、専門家のスキルと工数が必要となるため、ツール診断に比べて費用が高額になり、診断にも時間がかかる傾向があります。

6. 脆弱性診断の費用相場はどのくらいか?

脆弱性診断を検討する上で、最も気になる点の一つが費用です。

費用は診断の対象や範囲、手法によって大きく変動するため、一概には言えませんが、一般的な相場感を理解しておくことは重要です。

診断対象と範囲によって費用は変動する

脆弱性診断の費用を決定する最も大きな要因は、診断対象の規模と複雑さです。

例えば、Webアプリケーション診断の場合、診断対象となる画面数や機能の数(動的ページ数)が基本的な積算根拠となります。

静的なページのみの小規模なWebサイトであれば安価ですが、ログイン機能や決済機能、データベース連携などを持つ大規模なECサイトでは、診断の工数が増えるため費用は高くなります。プラットフォーム診断の場合は、診断対象となるIPアドレスの数が費用の基準となります。

7. 自社に合った脆弱性診断サービスの選び方

脆弱性診断サービスは多くのベンダーから提供されており、どのサービスを選ぶべきか迷うことも少なくありません。

以下の3つのポイントを参考に、自社の目的と要件に合ったサービスを慎重に選びましょう。

診断の目的と対象範囲を明確にする

まず、なぜ脆弱性診断を行うのか、その目的を明確にすることが重要です。例えば、「新規サービスリリース前の最終チェック」なのか、「定期的なセキュリティレベルの維持」なのかによって、求められる診断の深度や種類は異なります。

その上で、診断対象となるシステムの範囲(URL、IPアドレス、機能一覧など)を具体的に定義します。これらの要件を明確にすることで、ベンダーとの認識の齟齬を防ぎ、正確な見積もりを取得することができます。

診断員のスキルと実績を確認する

特に手動診断を依頼する場合、診断員のスキルと経験が診断の品質を大きく左右します。

情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)などの関連資格の保有状況や、自社と同じ業種・業界での診断実績が豊富かなどを確認しましょう。

また、最新の攻撃手法や脆弱性に関する情報を常に収集し、診断に反映させているかも重要な選定ポイントです。

報告書の分かりやすさとアフターフォロー体制を重視する

診断のゴールは、脆弱性を発見することだけではありません。発見された脆弱性の内容とリスクを正しく理解し、具体的な修正対応につなげることが最も重要です。

そのため、専門家でない担当者にもリスクの深刻度や影響が直感的に理解できるような、分かりやすい報告書を提供してくれるかを確認しましょう。

また、報告会での質疑応答や、修正方法に関する問い合わせに丁寧に対応してくれるなど、アフターフォローが充実しているかも、サービス選定の重要な判断基準となります。

8. 脆弱性診断の一般的な流れ

実際に脆弱性診断サービスを依頼した場合、どのようなプロセスで進むのでしょうか。ここでは、一般的な診断の流れを4つのステップで解説します。

Step1. 事前準備とヒアリング

まず、診断対象となるシステムの構成や機能について、診断会社からのヒアリングを受けます。診断をスムーズに進めるために、システムの仕様書やネットワーク構成図などの資料を準備しておくと良いでしょう。

この段階で、診断の範囲、スケジュール、緊急連絡先などを双方で確認し、合意を形成します。

Step2. 診断の実施

合意したスケジュールに基づき、診断会社が脆弱性診断を実施します。診断中は対象システムに高い負荷がかかる可能性があるため、通常は業務時間外の夜間や休日に実施されます。診断中に重大な脆弱性が発見された場合は、速報として報告が入ることもあります。

Step3. 報告と改善提案

診断完了後、発見されたすべての脆弱性について、その内容、危険度、再現手順、そして具体的な対策方法が記載された報告書が提出されます。多くの場合、報告書の内容を基にした報告会が開催され、質疑応答を通じて診断結果への理解を深めます。

Step4. 再診断の実施

報告書に基づき、自社の開発チームで脆弱性の修正対応を行います。修正が完了した後、対策が正しく行われているかを確認するために、指摘された箇所に限定した再診断を実施するのが一般的です。これにより、確実なセキュリティレベルの向上が実現できます。

9. まとめ

本記事では、脆弱性診断の基本的な概念から、その必要性、種類、費用、そしてサービスの選び方までを網羅的に解説しました。脆弱性診断は、サイバー攻撃から自社のシステムとビジネスを守るための基本であり、最も重要なセキュリティ対策の一つです。特に、NIS2やDORAといった欧州のサイバーセキュリティ規制に対応するためには、脆弱性の可視化と継続的な管理体制の構築が不可欠です。

自社の状況を正しく把握し、目的に合った適切な脆弱性診断を定期的に実施することで、安全で信頼性の高いサービスを提供し続けることが可能になります。

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