2021年もサイバー攻撃を実行する者は、オフィス以外の場所からリモートで勤務する労働者による豊富な攻撃ベクトルを生かすべく、多くのサイバー攻撃を行いました。FSB(金融安定化理事会)の報告書によると、サイバーセキュリティインシデントは2020年2月の毎週5,000件から、2021年4月後半には毎週20万件以上に増加しています。さらに、BAE Systems 社の報告書によると、コロナ禍によって企業がコスト削減を余儀なくされた結果、サイバーセキュリティ予算は26%減少し、IT チームはサイバーセキュリティを犠牲にしてリモートワークの課題に重点的に取り組むことを迫られています。COVID-19 関連のマルスパムの数は減少傾向にあるものの、コロナ禍は依然としてマルウェアの拡散を促しています。
2021年は、病院、工場、食品加工施設など重要インフラストラクチャへの攻撃も目立ちました。重要インフラストラクチャへの最大の攻撃の1つ は、2021年 4月に起きた、米国最大の石油パイプライ ンであるコロニアル・パイプライン社への攻撃です。DarkSideギャングによるこの攻撃は、同社を操業停止に追い込み、その結果、燃料の買い占めもあって燃料不足を引き起こしました。また、航空会社も飛行経路や運航計画の一時的変更を余儀なくされました。さらに、BlackMatterグループは世界最大の食肉加工会社であるJBS 社を攻撃し、1,100 万米ドルの身代金を要求しました。重要インフラストラクチャの攻撃を試みたランサムウェアの事例として、ブラジルの電力会社であるEletrobras社とCopel社に対する攻撃も行われました。電力供給のストップは報告されませんでしたが、こうした攻撃は大勢の市民に電力なしでの生活を余儀なくさせたり、電力供給を担う原子力発電所に損害を与えたりする可能性があります。また、イタリアのワクチン接種登録システムへのランサムウェア攻撃では、ラツィオ州の住民はワクチン接種が受けられなくなり、その命が危険にさらされる事態となりました。 さらに、米国 (UF Health Central Florida、Scripps Health、Crisp Regional Health Services) とフランス (Oloron-Sainte-Marie、Dax-Côte d’ Argent Hospital Center) の病院や医療センターのほか、 カナダ、オーストラリア、アイルランドの病院も攻撃を受けました。
前述のとおり、政府機関などへの攻撃を受けた件数で日本は11位でしたが、日本IBMのセキュリティー調査「IBM X-Force脅威インテリジェンス・インデックス2022」によると、2021年最も攻撃を受けた地域はアジアであり、全世界で観測した攻撃の4件に1件以上がアジアで発生しました。その60%近くが金融機関と製造業を標的としたもので、最も攻撃を受けた国として日本が1位。攻撃の20%はサーバーアクセス攻撃で、侵入経路としては約半数がフィッシングという結果になりました。